施主のライフスタイルを知り尽くした建築家。何でも言える関係だから、突き詰められる仕上がり。
マンションのリフォームは、通常長くて1.5ヶ月ぐらい。
この度のM邸は、間取りも大きく変更している大改修だが、
それにしてもまる3ヶ月をかけたというから、そのこだわりはかなりなもの。
「一番時間がかかった工事?
それはもちろん、この床全面に敷き詰めている大理石調のタイル貼りだよ。
なんせ、不陸(ふりく=歪み)がないかを光にかざしながらチェックするから、
ベテランの職人でも1日に10枚しか貼れないんだよ。」
「あと、塗り壁だけでも2週間の工事だったし、
キッチンとトイレに使用しているタイルは、ガラスモザイク。
普通のタイルと違って、これまた腕がないときれいに仕上げられないんだ。
職人たちも、トコトン付き合うしかないなって腹を決めた現場だったね。」
なるほど!確かに床暖房の入った大理石調タイルは、ほのかに暖かく、
ソリッドだけれど優しい、何とも言えない質感が足の裏から伝わってくる。
レベルの高い建材は、それに釣り合うだけの腕がないと、
納めることができない わけだ。
「一般的な内装材でこの床面積を施工したら、
材料費と工賃は半額で仕上がりますよ。
でもそれだと、壁はクロス貼りで、設備のランクもそれなり、
床もマンション用のフローリングということ。全くの別物です。」
「これだけ最高の材料をふんだんに使って、
自由にやらせてもらう現場なんて、そうはありません。
自分にとっても、建築家として
20年目の集大成って気持ちで、取り組みました。」
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